SSブログ

精神病理これだけは

7月となった。今年も早や後半である。このところ自分の専門分野の本や雑誌が読めていない。勉強会や研究会は定期的にやってくるのである意味ありがたい。自分でやる勉強は自ら叱咤激励しないといけないのだろう。

先日、本屋に行って、タメになりそうな学術雑誌を見つけ、購入した。精神科治療学という学術雑誌の新刊(星和書店)で、Vo,31 No.6 Jun.2016 特集「これだけは知っておきたい精神病理」である。近年の精神病理学の消褪は深刻なものがある。統計が重視されいわゆるエビデンスが偏重され、DSM のような単純化された診断基準が緻密な観察を覆い隠そうとしている。そのような風潮の中で、精神病理学を学ぶ、見直すということの重要性は力説しておきたいものである。

このブログで、時々、本や雑誌を紹介しているが、ほとんどはおもしろそうな本を購入しました、という話であることは、以前からのブログ読者はご承知であろう。今回も同じく、まだ入手したばかりである。一部くらいは読んでブログの記事にすることはあるが、今回はまだ本文を読んでいない。なにせ専門誌なので、店頭にあるうちに紹介したほうがよいだろうということで今、慌てて書いている。

目次を見ると、シュナイダー、クレぺリン、コンラート、ブランケンブルク、ラカンなどが取り上げられている。日本人も取り上げられていて、たとえば中井久夫の名前も見える。

古茶大樹氏による前書きだけは読んだので、一部を引用しておく。

精神病理学の成果は、観察者の視点と深く関係がある。そこには様々な視点・パースペクティブが含まれている。われわれはつい成果としての理論に関心が向いてしまうのだが、本当に重要なことは理論そのものではなく、提唱者の視点であると思う。その視点に立つことで自ずと見えてくる景色がある。それを知ることで、目の前の一人の患者のいろいろな側面が見えてきて、理解を深めることができる。人の心に関する理論には、どうにもエビデンスという形で実証できないものはいくらでもあることを強調しておきたい。統計学的に証明できないからと言って、それらに目を向けないこと・無視することは、心の医学である精神医学にとって不幸なことではないかと思う。(同誌3頁)

nice!(14) 
共通テーマ:健康