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パリのジャズクラブ

外で蝉が鳴いている。お盆休みのためか、金曜日は通勤電車はすいていた。しかし、駅では帰省や海外旅行に行くと思われるスーツケースを持った人々が目につく。私は、今年はパリに行きそびれた。この後、年末までの予定を考えると学会やらワークショップなどが続いており、行くのは難しそうだ。

昨年の夏にパリに行ったことを思い起こそう。大方は精神分析の勉強のために行ったのだが、パリ滞在の最後の夜にはジャズライブを聴きに出かけた。2015年7月2日のことである。

場所はパリ1区の Duc des Lombards というジャズクラブである。出演は Kenny Barron Trio で、ピアノの Kenny の他にベースが Kiyoshi Kitagawa ドラムスが Johnathan Blake というメンバーである。ニューヨークで活躍しているトリオで、ケニー・バロン はパリの直前は日本で公演をしていたそうだ。ベースの北川潔さんは以前、ピアノの小曽根真さんとトリオを組んでいた時に演奏を聴いたことがある。その時の北川さんの印象はほとんど残っていないのだが、今回の演奏は死ぬまで忘れないだろうというほど印象深かった。丸坊主に近いようなヘアスタイルでほとんど目をつぶって弾かれているのだが、禅僧が演奏しているのかと思えてしまうような深みのある東洋的な音だと思った。米国で日本人が活躍するには米国の有名な奏者の物まねではダメだ。自分のアイデンティティに根ざした説得力のある深みのある個性を発揮することが必要なのではないか。しかし、単に奇をてらったものや薄っぺらな東洋趣味ではダメなのは言うまでもない。

さて、当日のライブに話を戻そう。ようやく勉強が終わり、さてジャズライブを聴こうかと思って調べたところ、Kenny Barron Trio のチケットは売り切れとのことであった。それでも私は諦めず店に向かった。行列の人々が店に入っていったところで、受付の女性に話してみた。すると開演直前の時間にここに来いと言う。しばらく時間を潰して戻ってみるとなんと入店することができた。チケットを持っていても用事などで来ないひとも中にはいるだろうから、様子を見て何人かは入れてくれるのだろう。しかし、団体さんは断られていたので、こういう時は一人がよい。夏の暑い日に我慢の子で待った甲斐があったというものである。トリオ演奏は滅多に聴けない格別のものだった。
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