SSブログ

旅ふたつ

先週末は日本精神分析学会が名古屋で開催され、参加してきた。あるセミナーではフランスの精神分析家ラプランシュが取り上げられた。主著である「精神分析用語辞典」は持っているが、他にあまり知識はなかったので大変勉強になった。討論ではラカンの話がけっこう出た。ラプランシュ自身、ラカンの分析を受けながら後にラカンを離れているのだが、フランスの精神分析はラカン派でなくてもラカンの影響はやはり大きいことが思い起こされた。その他のセミナーや演題も大いに刺激になった。久しぶりにお会いする知人も何人かいて懐かしかった。

その前の週末は私の出身大学のテニス部のOB会があり、これまた泊まりがけで出かけていたので、結果的に2週続きの小旅行となった。この際も懐かしい人々に久しぶりに会った。ふだん会う人は限られているが、久しぶりに人に会うと、いろいろな人との出会いがあり刺激を受けたりお世話になってきたのだとあらためて思う。

自分にとっては、精神分析や精神医学の修行は昔テニスを一生懸命やっていたこととつながっている。ある一つのことはそれだけでは完結しないのである。そう言えば、ラプランシュはワイン業を営んでいたそうだが、よいワインを作るのは精神分析家の仕事にも通じることだろう。ワインとは、いきなり作りあげられるものではない。ぶどうがワインになっていくのである。ワインそのものを人間が無から作りあげるのではない。細心の注意を払い根気強い作業があってよいワインになっていく。精神分析の過程もそうだ。精神分析を通じてある人が最後には別人のようになる。それは、精神分析主体がそのようになるのを、見守ったり限られた範囲での援助をするだけである。大地、日の光、水、空気、気候、そういったものに比べたらワインを作る人間は無力と言ってもいいくらいである。


nice!(11) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 11